白音諾勒村小学校教育条件改善協力事業
事業年次:2004(平成16)年度〜2006(平成18)年度
この事業は、新潟・国際協力ふれあい基金の助成を得て実施しています

1 事業の趣旨及び目的
 新潟県日中友好協会は、約四半世紀にわたり中国・黒龍江省との友好協力関係の増進に取り組んでまいりました。
 交流が深まるにつれ、黒龍江省の西部地域に今なお多数の貧困人口が存在することを知り得ました。併せて、適正な教育機会の欠如や教育環境の不備が貧困人口の存在の一因となっていることを知りました。
 このため当協会は、黒龍江省内の貧困県における教育環境整備事業と連携した支援活動を2000(平成12)年度に立ち上げ、会員をはじめ広く市民の皆様に支援金の募金をお願いしてまいりました。
 現在までに県内外から寄せられた募金は約62万円となっております。
 また、黒龍江省人民対外友好協会と連携し、2002(平成14)年7月には理事二名が、黒龍江省内で最も多く貧困人口を抱える大慶市杜爾伯特(トルバト)蒙古族自治県と林甸(リンデン)県を訪問し、実情を調査してまいりました。
 杜爾伯特蒙古族自治県は農用地の砂漠化と頻発する水害や旱魃が原因し、省内で最も貧困人口の多い県です。同県は、貧困からの脱却と地域経済の自立的発展の基本は初等中等教育の充実にあるとし、2001(平成13)年末から教育振興を目的とする「愛心工程」を立ち上げ、教育条件の改善に取り組んでいます。
 なかでも同県下の白音諾勒(バイヌル)郷白音諾勒村は、1998(平成10)年の水害やその後数年に及ぶ旱魃により、村民一人当たり年収はわずか400元(日本円約6,000円)に過ぎません。このため、貧困のために就学が困難な児童生徒は27名と全就学児童の17%にも及んでいます。
 また、白音諾勒村の小学校校舎は老朽化が著しく倒壊の危機に瀕したため、2002(平成14)年5月に移転新築に着手し同年10月に新校舎は竣工しました。しかし、資金難のため総額41万元(日本円約615万円)の校舎建設費のうち26万元(日本円約390万円)しか準備できず、2003(平成15)年6月末現在、15万元(日本円約225万円)が支払い不能となっております。
 加えて、同村の年間予算規模は6万元(日本円約90万円)程度に過ぎず、自助努力は限界に達していることから、教育設備機器は全く整備されていません。
 以上のことから当協会は、白音諾勒村小学校の教育設備機器等の整備に充てるため、現在まで寄せられた募金を基に所要の資金を支援することといたしました。
 このことを受け、2003(平成15)年12月に改めて理事五名から成るミッションを派遣し、教育設備機器整備計画の内訳明細と年次計画について協議するとともに、教育設備機器導入の基礎的条件及びその運用体制の有無や保守管理体制の現状と課題並びにその解決策について調査し協議を行いました。
 協議の結果、補足資料A)に記載したとおり、基本的な合意あるいは理解を得ることができましたことから、白音諾勒村小学校教育条件改善協力事業を実施することといたしました。
 当協会といたしましては、この協力事業により、20年に及ぶ新潟県と黒龍江省との信頼関係はさらに強化され、友好交流の末永い発展が促されるものと確信いたしております。また、当協会と白音諾勒村、そして白音諾勒小学校との新たな交流が始まり、新しい友人ができることと思います。

2 現地の現状と課題等
(1)現状と課題
 白音諾勒村小学校の現校舎は2002(平成14)年10月に竣工し、供用を開始しています。
 現校舎は木造煉瓦造りで建築面積は520u。廃油を燃料とする暖房設備が設置されています。
 在校生は162人(5クラス)で、教職員数は13名。
 現校舎の建設経費は計41万元(日本円約615万円)を要し、うち26万元(日本円約390万円)は既に支払ったが残余の15万元(日本円約225万円)は未払いとなっています。
 なによりも問題な点は、教育設備機器が皆無に等しい状況にあることで、現状保有していないため早急に以下のものを新たに購入し整備する必要に迫られています。
   ・幻灯機、顕微鏡、録音機等の教育器材
   ・テレビ、DVD、プロジェクター等の教育設備
   ・印刷機、複写機等の機器
   ・パソコン及びその周辺機器
 上記設備機器のうち、特にパソコン設置の緊急性と重要度は高く、その事由については2003(平成15)年12月の現地協議に際し、以下のとおり説明を受けています。
 「白音諾勒村小学校卒業生の進級先である白音諾勒郷中学校では、現在、IT教育が必修科目となっている。同中学に入学する生徒は白音諾勒村小学校を含み計9箇村の生徒から成り、白音諾勒村小学校以外は程度の差こそあれほぼIT教育を実施する体制を整えている。このことから、中学入学と同時に始まるIT教育を受けるに際して、白音諾勒村小学校卒業生のみが大きなハンディキャップを背負うこととなり、その解決は緊急かつ重い課題である。」
(2)課題に対する解決支援策
 白音諾勒村の年間予算規模はわずか6万元(日本円約90万円)程度に過ぎず、上記の教育設備機器等の整備に要する経費10.78万元(日本円約144万円)を独自に支弁することはきわめて困難であると理解しております。
 また、白音諾勒村を管轄する杜爾伯特蒙古族自治県も同様に予算規模は小さく、加えて県内全域にわたり農耕地の砂漠化が深刻な状態にあり自給食料にもこと欠く状況が過去数年にわたり続いているため、自助努力は限界に達していると理解しております。
 教育設備機器や教育環境条件の整備は一義的に当該国や当該地域の責めに帰すものではありますが、上記の事情により自立的な措置はきわめて困難であること明らかです。
 このため、教育設備機器等の購入資金手当ての目処を確かなものとするためには、国内外を問わない支援が必要と判断しております。
 具体的な協力策については、次のとおり合意しております。
 ・幻灯機2台、顕微鏡12台、録音機6台、並びに、テレビ1台、DVD1台、プロジェクター2台の教育設備購入資金、及び、印刷機1台、複写機1台の機器購入資金…計3.98万元相当の円貨による支援
 ・パソコン及びその周辺機器20セットの購入設置資金…計6.80万元相当の円貨による支援
(3)解決支援策実施にあたって想定される問題点
1) 教育設備機器導入後の保守管理体制が整っていないのではないかと懸念されておりましたが、2003(平成15)年12月の現地協議の結果、設備機器の購入先は原則として同地から距離約110km、移動時間約1時間40分の至近の大都市である大慶市(中国最大の原油産地)とすることで合意いたしましたことから、保守管理に支障をきたすことはないと判断しております。
 なかでも、保守管理面で最も高度な条件を必要とするパソコンに関しては、大慶市に所在し中国でも有数のパソコンメーカーである「大慶同創」製品の採用を提言したところ、設置時無料講習の実施並びに補修等のメーカー保証が三年と明示されていることを鑑みて同社製品の採用を決定したことから、当面、保守管理の問題は大きくないと判断しております。
2) 中国では近年、小学校低学年からIT教育に精力的に取り組んでおり、中学校にあってはIT教育を必修科目としています。一方、辺境の農村部にあってはIT指導者が不在の場合が多いことから、同校にあってもパソコン操作技能の習得に支障をきたすことが懸念されておりました。
 このことについて、2003(平成15)年12月の現地協議の結果、パソコン操作指導要員の配置が計画されていること、進級先の中学校から指導要員を臨時的に派遣することも可能であることが判明いたしましたことから、IT指導者の不在という事態は避け得ると判断しております。加えて、2003(平成15)年12月の現地協議に際し、まず初年度に指導要員の配置並びに指導・学習の実情などを見極めることとし、十分な体制が整っていない場合には至近の大都市である大慶市の関係機関と連携して指導要員を派遣するなどの対策をとる必要がある旨を提言し理解を得ておりますことから、パソコン導入後の活用は担保されると判断しています。
 なお、中国では、辺境の地の教育振興のためにはインターネットによる遠隔教育が最良の方策であるとされその実施に特に力を入れていますが、2003(平成15)年12月時点で同校には通信回線が敷設されていないことが判明しました。このことについて、遠隔教育の環境を整えるべく白音諾勒郷中心地まで敷設されている光ファイバー通信回線の延伸敷設を提言しましたところ既に計画に組み入れているとの回答を得ましたことから、IT機器の十全な活用の将来展望も明るいと判断しております。
3) 白音諾勒村小学校が緊急に必要とする教育設備機器等は上記のとおりですが、この他に教育図書等の備え付けは皆無に等しいことが2002(平成14)年7月の現地調査の結果判明いたしました。このため、2002(平成14)年7月及び2003(平成15)年12月の二度にわたり教育関係図書を現地で購入し寄贈いたしました。
 この点に関しては、更に継続した協力が必要と判断しております。

3 現地協力団体等
 黒龍江省人民政府外事弁公室・黒龍江省人民対外友好協会
 白音諾勒郷人民政府
 白音諾勒村小学校

4 事業実施スケジュール
実施時期 活動内容
2004(平成16)年3月〜2007(平成19)年3月 ・ 円貨による支援金の集約並びに持参
・ 現地における教育設備機器等の購入や設置並びにその進捗状況等の確認、及び、教育設備機器導入後の保守管理体制、PC操作指導や学習実態の掌握、遠隔教育環境整備状況の把握など
2002(平成14)年7月〜(所要の期間) ・ 教育図書等の整備にかかわる協力
事業実施の詳細スケジュールは別表のとおりです。(MS-WORD)

5 期待される実施効果
(1)事業効果
  白音諾勒村小学校在校生の教育環境が確実に整うことはもとより、黒龍江省内で経済的に最も立ち遅れている杜爾伯特蒙古族自治県の教育振興事業を後押しすることとなり、ひいては将来に向け地域経済の自立的発展の確かな基礎が築かれる。
(2)活動の影響を受ける人数
  白音諾勒村小学校生徒・教職員 計175名、並びに白音諾勒村住民 約2,000人。
(3)現地の自立
  2007(平成19)年3月までを目処に継続する協力事業により、白音諾勒村小学校の教育環境が整い、その後はほぼ自立的な歩みを開始すると見込まれます。

7 事業の収支計画
区分 項              目 金   額
収入 自己資金(募金残高) 620千円
自己負担(渡航者自己負担経費) 900千円
自己資金(一般会計から拠出) 50千円
新潟・国際協力ふれあい基金 821千円
2,391千円
支出 白音諾勒村小学校教育設備機器購入資金支援 1,441千円
渡航費 900千円
通信運搬費 50千円
2,391千円

─ 補足資料 ─
A)白音諾勒村小学校教育条件改善協力事業に関する協議並びに合意事項記録(MS-WORD)
B)黒龍江省の貧困県及び杜爾伯特蒙古族自治県の教育振興「愛心工程」の概要(MS-WORD)
─ 添付図 ─
  1)黒龍江省全図(MS-EXCEL)
  2)杜爾伯特蒙古族自治県の位置図(MS-WORD)
  3)杜爾伯特蒙古族自治県の貧困村(MS-WORD)
  3)白音諾勒郷及び白音諾勒村の位置図(MS-WORD)
  4)白音諾勒村小学校の敷地図(MS-WORD)
  5)白音諾勒村小学校校舎平面図(MS-WORD)
  6)白音諾勒村小学校校舎立面図(MS-WORD)
─ 添付写真 ─
  @白音諾勒郷の現状と白音諾勒村小学校旧校舎の実情並びに現況
    1)白音諾勒郷の社会経済統計(MS-WORD)
    2)白音諾勒村小学校旧校舎の実情並びに現況
     ・写真T(MS-WORD)
     ・写真U(MS-WORD)
     ・写真V(MS-WORD)
     ・写真W(MS-WORD)
  A「大慶同創」製パソコン画像(MS-WORD)
─ 参考資料 ─
  T)外務省の対中国経済援助政策(MS-WORD)
  U)外務省の対黒龍江省無償資金協力・草の根無償資金協力(MS-WORD)