酒の味は、米や水、それに山があったり、雪が降ったりというその土地の風土や環境によって 
   左右される。イメージとして新潟は、「米」「水」「雪」と誰もが想像するだろう。ただ「米ど 
   ころ」だから、「水が綺麗」とそのまま美味しい酒につながるわけではないが、新潟に美味しい 
   酒を造る環境があった事は確かだ。                            


 いい米
 「いい米 = いい酒」とは必ずしも言えないが、いい米がなければいい酒はできない。いい米とは一般に、「五百万石」「山田錦」「高嶺錦」などを代表とする酒造好適米があったのではない。それを得るのには大変な努力が必要だったようだ。
 米の話として、三島郡和島村・久須美酒造をモデルに、劇画・ドラマ化した『夏子の酒』が有名である。当時“幻の酒”とされ、全国でほとんど栽培されなくなった「亀の尾」稲穂を、数本入手し、二年越しの栽培の後『亀の翁』という酒ができた。

 いい水
 酒造りには、洗米、浸漬、仕込み水などたくさんの水が必要だ。新潟の雪は伏流水となり、豊富な水を与えてくれる。新潟の水は山水とか清水の「軟水」で、一般に柔らかな女性らしい酒になる。逆に、灘や伏見の水は「硬水」のため、ミネラル・マグネシウムなどいろんな成分を含み、醗酵力が旺盛になり一般的にごつい男 酒ができ易い。軟水・硬水だから良い、悪いではなく、その土地の水質によって酒も変わってくる。なぜなら酒の80%は水だからだ。ただし、その水が綺麗でなくては美味しい酒にはならない。

 雪が降る
 酒造りの環境には、水や米の他に、周りに山があったり雪が降ったりすることも大切だ。例えば、雪が降ると空気中の雑菌はどんどん減っていく。雑菌があると微生物の醗酵に影響を与えてしまう。雪による長期低温醗酵は、雑菌の繁殖を抑える。
 酒造りは結局、優良微生物を利用した醗酵技術だから、雑菌は少ないほうが良い。雪がシンシンと降ることによって、空気の綺麗さが違ってくる。