July 22, 2002 UP LOAD

現地研修団派遣に至る経緯

 中国は今、改革・開放政策の下、東部沿海地域を中心に急速な経済発展を遂げています。
 その一方で、いまなお、592の「国家級貧困県」(行政村にして5,076村)が存在します。
 居民一人当たり年収が640元以下の県(1999年の基準値)が、「国家級貧困県」とされますが、年収のレベルは、全国農村の平均値に比べ約60%に過ぎません。
*出所:中国国家統計局Webサイト
http://www.stats.gov.cn/news/paper/tjbg2000/jm044.htm

 1986年以降中国政府は、世界銀行(WB)グループや国連開発計画(UNDP)など国際機関の援助を受けながら、「貧困扶助開発プロジェクト」を大規模に繰り広げています。
 プロジェクトの力点は、貧困地域の教育・衛生・文化状況の改善に置かれています。
 これを受け、貧困地域の教育条件の改善や「失学児童」(就学適齢期にあるにもかかわらず就学し得ない児童)の復学のための資金援助等に取り組んでいる非営利社会公益団体が“中国青少年発展基金会”です。
 資金援助のプロジェクトは名づけて『希望工程』と言われます。

 新潟県と友好県省の関係にある黒龍江省にあっては、「黒龍江省青少年発展基金会」がこの『希望工程』に取り組んでいます。
 黒龍江省には、以下の14の「国家級貧困県」があります。

1)哈爾濱市延寿県 2)綏化市蘭西県 3)鶴崗市綏濱県
4)佳木斯市同江市 5)佳木斯市樺南県 6)佳木斯市湯原県
7)佳木斯市撫遠県 8)佳木斯市樺川県 9)双鴨山市饒河県
10)斎々哈爾市甘南県 11)斎々哈爾市泰来県
12)斎々哈爾市拜泉県 13)大慶市林甸県
14)大慶市杜爾伯特蒙古族自治県
*出所:黒龍江日報 2002年 3月 9日

 2000年末、黒龍江省の「絶対貧困人口」(一人当たり年収が625元以下の人口)は70万人でしたが、2001年の最新統計では「絶対貧困人口」は153万人にのぼるとしています。
 2001年内に新たに83万人が「絶対貧困人口」にカウントされたことになりますが、その要因は自然災害等にあるとされています。
 黒龍江省の2001年の「郷村人口」(農村人口=1,815万人)に占める「絶対貧困人口」の比率は、実に8.5%に達します。
 2002年2月、「黒龍江省扶貧開発弁公室」(主任:陳華)は、同省内の14の「国家級貧困県」に属する1,199の行政村と「省級貧困県」7県下の537行政村を含む全省3,052行政村を対象とする「扶貧開発計画」(貧困扶助・開発計画)を策定しました。
 計画では、2002年内に先ず500の行政村において「扶貧開発」プロジェクトを実施し、1行政村当たり160万元から200万元の「扶貧開発」資金を投入するとしています。
*出所:黒龍江日報 2002年 6月10日

 2001年11月14日付け「大慶日報」は、“杜爾伯特蒙古族自治県−教育振興「愛心工程」始動”と題し、要旨以下のルポルタージュを掲載しました。
・11月14日、同県は、貧困小中学生の復学を支援するプロジェクト−教育振興「愛心工程」を立ち上げた
・同県では、小中学校の統廃合や家庭の貧困などが原因し、小中学生の就学難がおきている
・通学距離が2kmに及ぶ小学生は2,543人にものぼり、最遠距離が13kmに達するケースもある
・同県はこれらの事態を受け、「失学」の発生を防ぐため、300万元近い資金を投じて、教育振興「愛心工程」を実施することとした
・「愛心工程」の主な内容は以下のとおり
1)130万元を投じて40台の車輌を購入し、小学生を無料で送迎すること
2)60万元を投じて44個所の“愛心餐”(給食所)を建設し、2,600人の小学生に無料で昼食を提供すること
3)基金額50万元の“貧困学生基金会”を設立し、貧困家庭の小中学生の就学を支援すること
・11月14日、同県の広範な人々は、「愛心工程」に10万元の支援金を寄せた
・同県党委員会の徐廣国書記によると、“愛心餐”によって1,000余人の「失学」児童が復学を果たしているという
*出所:大慶日報 2001年11月14日

 以上の情報を背景に、黒龍江省の「国家級貧困県」である大慶市杜爾伯特蒙古族自治県、並びに隣接する同市林甸県の教育条件改善事業の現状を掌握するため、山本昭二・宮澤一也両常任理事が現地を訪問しました。